『運び屋』(The Mule)

  • 2019.03.15 Friday
  • 22:51

JUGEMテーマ:日記+情報

 

クリント・イーストウッドが、あれほどよれよれになっても映画人をやめないのは、もちろんそういう需要があるからだ。そして彼は自分自身でその需要を作り出している。プロデューサーとしても、監督としても一流のシネアストなのだ。 
あの荒野の用心棒やダーティーハリーを演じた彼が、若いちんぴらに血まみれになるまで殴られ、妻に愛想を尽かされ、娘には10年以上も口をきいて貰えない、しなびた爺さんになっている。しかしガンマンや刑事時代に培った男の矜持は忘れない Mule (=原題: 愚かな頑固者)だったのだ。 

彼は自分が制作側に回った頃から、タブーを正面から取り上げるようになった。社会が内包する矛盾をえぐり、さらし者にして、「おい、これでいいのか?」と我々に問いかける。そのためには正義がないがしろにされる結末さえいとわない。今回、主人公は黒人を蔑称である「ニグロ」とよび、その黒人から怪訝な顔をされる。もちろん主人公も、制作者である彼自身もそれを蔑称とは思っていない。その言葉を蔑称であるとする、表層的な「言葉狩り」に立ち向かっているのだ。 
複雑に絡み合う善悪と清濁の隙間で、シネアスト・クリントはダーティな闘いを挑み続ける。 

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