『シェイクスピアの庭』を観てきた

  • 2020.06.16 Tuesday
  • 19:02

謎の多い人で、実在が疑われることさえあるが、この映画は謎の空白部分を作者の想像で埋めようとする。
その道では大成功を収めた大劇作家が、私生活では惨めな思いをしたのだろうか。経済的には成功しても、息子は夭逝し、娘はスキャンダルにまみれた。そもそも本人の結婚も危ない橋を渡っていたようだが。
 
その昔、確か著名な英国の文学者がシェイクスピアを評して、
『なんと気の毒な男だ。これほどの道化になりきれるということは、大変な悲しみを知っているからに違いない』と言ったように記憶する。戯曲を読んでいて、それはたぶん事実だろうと思うことが幾度もあった。たとえば『ハムレット』で主人公とオフェーリアが芝居を観に行き、その前口上が極端に短かったのに、二人が驚いた時の台詞をご存じの方は多いだろう。

「なんだ、あれは。指輪の銘か?」
するとオフェーリアが、
「本当に短うございますわね」
ハムレットが続けて
「まるで女の恋のように」
 
こんな台詞を吐ける男が、いったいどれくらいの割合でいるものだろうか。万に一人か? シェイクスピアはそれを登場人物の口を借りて語った。そういえばこの人、自分の書いた芝居で役者をやっていたのも間違いないと言われている。上の台詞も自分で言ったのだろう。
 
彼の不在中に10才を少し超えたばかりの息子が自殺する。その隠された事実を暴きたてたのは他ならぬ彼自身だった。かわいがったはずの娘からは恨まれ、憎まれ、劇作家は言葉も失う。自立した人格を主張する娘に対して古い家父長的な姿勢を崩せない主人公は、その態度とは裏腹に、内面の崩壊を自覚する。
死んだ息子のために庭を耕す彼は、そこで何を育てようとしたのか。思い出せもしない息子の笑顔。それとも事業の成功の陰で、顧みずに失った家族の絆か。しかし彼に残された時間は余りに短かった。
 
最期は腐ったニシンを食べて食中毒で死んだとか。同時代の徳川家康が魚の天ぷらに当たって死んだのと似ている。だからどうしたというわけじゃないけど。


奥さん役のジュディ・ディンチも良かったなあ。この人が良くなかった映画なんてないけどね。

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